極低温近赤外フォトルミネッセンス測定装置 |
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フォトルミネッセンス(Photoluminescence, PL)法とは、物質に光を照射して電子を励起し、
その励起電子が基底状態へ遷移する際に放出される光(ルミネッセンス)を分光・検出することにより、
材料中の電子状態や欠陥、不純物レベルを非破壊で評価する手法です。発光スペクトルのエネルギー位置や強度、
スペクトル幅などの解析を通じて、材料のバンド構造、格子の完全性、微量不純物分布などを把握することができます。 本装置は、532 nmレーザーを励起光源として搭載しており、 主に近赤外領域の発光を測定対象としています。 近赤外領域で発光するデバイスや近赤外波長領域での光検出デバイスの特性評価に適しています。 本装置はクライオスタットを搭載しており、試料を4 Kまで冷却して極低温環境を実現することで、極低温フォトルミネッセンス測定が可能です。これにより、室温では観測が困難な微細な発光構造や励起子発光の詳細な解析が可能となります。 測定によって以下のような情報を取得できます:
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■仕様 |
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■Ge基板のPLスペクトラム(室温) |
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※本仕様および外観は改善のため予告無く変更することがあります。 |
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■フォトルミネッセンス(Photoluminescence, PL)の基本原理 |
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フォトルミネッセンス(PL)は、物質に高エネルギーの光(励起光)を照射することで、価電子帯に存在していた電子が励起され、伝導帯などの高エネルギー準位に遷移した後、再び基底準位へ戻る過程において放出される光(フォトン)を検出・解析する光学的手法です。この現象は、主に半導体材料や蛍光体などにおける電子状態の評価や材料品質の診断に広く利用されます。 図に示すように、基底準位(多くの場合は価電子帯上端)にある電子は、外部から照射される励起光のエネルギーを吸収し、より高いエネルギー準位(典型的には伝導帯)に励起されます。これにより、電子と正孔の対が形成されます。
しかしながら、励起された電子は即座に再結合して放射遷移を起こすとは限りません。多くの場合、再結合に至る前に、以下に示すような緩和機構を経由することがあります。
このような過程により、PL測定で観測される発光スペクトルは、必ずしも入射光子のエネルギーとバンドギャップのエネルギー差をそのまま反映するわけではなく、物質内部における多様な緩和経路の影響を受けることになります。 PLは、試料に非接触・非破壊で適用できる高感度な評価手法であり、バンド構造やエネルギー準位の解析に加え、結晶性、欠陥密度、不純物分布などの情報を包括的に取得可能です。特に半導体デバイスの材料開発や品質管理、量子ドット・低次元構造の評価において重要な技術として位置づけられています。 |
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■内部量子効率(IQE)とは |
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内部量子効率(Internal Quantum Efficiency, IQE)とは、半導体中で生成されたキャリア(電子・正孔)のうち、 放射再結合(光として放出)した割合を示す指標です。
定義式: IQEは材料や構造における非放射再結合の影響を評価する上で重要な指標です。 |
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■低温PL測定による相対的内部量子効率(IQE)の評価方法 |
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この方法では、低温(通常10 K前後)でのPL強度を放射再結合による最大発光とみなし、 室温(300 K)でのPL強度と比較することで、相対的な内部量子効率(IQE)を算出します。
前提条件:
相対IQEの近似計算式: |
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■低温PL測定による内部量子効率(IQE)の算出ステップ |
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■外部量子効率(EQE)とは |
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外部量子効率(External Quantum Efficiency, EQE)とは、半導体デバイス(例:LED、太陽電池)から 外部に放出された光子の数と、注入または生成されたキャリア(電子)の数の比率を示す指標です。
定義式: EQEはデバイスとしての実際の発光効率を表し、測定には積分球などを用いた絶対PL測定や電気駆動下での測定が使われます。 |
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■積分球による外部量子効率(EQE)の測定方法(2π測定) |
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外部量子効率(EQE)は、積分球を用いてデバイスから放射される光(分光放射束)を測定し、 注入された電子数と比較することで算出できます。ここでは、積分球が測定する「2π方向(前方半球)」の放射束を用いた手法を説明します。
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■外部量子効率(EQE)と内部量子効率(IQE)の関係 |
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EQEとIQEの間には、以下のような関係式があります:
ここで、 取り出し効率は、屈折率差による全反射、デバイス構造(反射層やパターン加工)、光吸収などにより影響を受けます。 IQEは材料内部での発光効率、EQEはそれを含めた「実際に外に出る光」の効率であり、 IQEの最大値は100%ですが、EQEはそれ以下になるのが通常です。 |