外部量子効率測定用マニュアルプローバー MMPS-50EQE |
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本装置は、LEDなどの微小発光素子における外部量子効率(EQE: External Quantum Efficiency)を測定するためのマニュアルプローバーです。特に、ウェハレベルで形成されたLED素子の光学特性評価に最適化されており、研究開発から製造プロセスの評価に至るまで、信頼性の高い測定データの取得を可能にします。 本システムでは、顕微鏡による高倍率観察を行いながら、プローブ針を正確にLED素子の電極へ当接させることができます。電流を印加して素子を発光させ、裏面側から放射される前方光(2π方向)を積分球に効率よく取り込み、分光器を用いて波長ごとの分光放射束を定量的に測定します。得られたスペクトルデータに基づいて光子数を算出し、印加電流とあわせて外部量子効率を導出します。 |
■仕様 |
サンプルサイズ |
20mm × 20mm 以下 |
プローブ針(同軸針) |
材質:タングステン
先端半径:12.5μm
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ポジショナ |
XYZ軸移動範囲:各10mm
トラベル量:各250μm回転
数量:2個
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XY軸 移動範囲 |
X, Y 各 ±25mm |
Z軸 移動範囲 |
4mm |
実体顕微鏡 |
倍率:10倍 ~ 65倍
照明:LEDリング照明
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積分球 |
波長範囲:200nm ~ 2500nm
積分球直径(内部):38.1mm
コーティング:スペクトラロン
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校正用光源 |
ランプ:ハロゲンランプ
波長範囲:350nm 〜 1100nm
校正有効期間:50時間
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分光器 |
波長範囲:200nm 〜 850nm
分解能:7.82nm(@スリット幅200μm)
2.06nm(@スリット幅50μm)
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ベースプレート |
サイズ:300mm × 300mm |
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※本仕様および外観は改善のため予告無く変更することがあります。 ※外部量子効率を算出するプログラムは付属しておりません。 |
■外部量子効率(EQE)とは |
外部量子効率(EQE: External Quantum Efficiency)とは、LEDなどの発光素子において、
「外部に放出された光子の数」を「注入された電子の数」で割った値です。
式:
EQE = 放出光子数 ÷ 注入電子数 = Φphoton / (I / q)
※ Φphoton:外部に放出された光子数 [photons/s]
※ I:電流 [A]
※ q:電子の電荷(1.602 × 10-19 C)
■ EQEと他の量子効率との関係
EQEは次のように分解できます:
EQE = IQE × LCE
- IQE(Internal Quantum Efficiency):内部での発光効率(非放射再結合を除く)
- LCE(Light Extraction Efficiency):内部から外部へ光が取り出される割合
■ EQEの重要性
- LEDやレーザーなどの発光性能を定量評価できる
- 光源設計・構造最適化の重要な指標となる
- IQE・LCEの分離解析により、材料・構造改善の方向性が得られる
■ EQEの測定方法(概要)
- LEDに電流を印加して発光させる
- 積分球で放射された光(例:2π方向)を測定
- 分光器で波長ごとの分光放射束を取得
- 放射エネルギーから光子数を算出
- 電子数と光子数からEQEを計算
■ まとめ
項目 |
内容 |
定義 |
外部に出た光子数 ÷ 注入電子数 |
単位 |
無次元(% 表記) |
構成要素 |
EQE = IQE × LCE |
用途 |
発光素子の評価、光取り出し効率の設計・解析 |
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■外部量子効率の算出ステップ(2π測定をもとに) |
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積分球で測定した前方放射束(2π方向)
積分球で測定された分光放射束(単位:W)から波長ごとの光子数を算出します。
数式:
Nphoton = ∫ (Φλ × λ) / (h × c) dλ
※ Φλ は波長 λ における分光放射束 [W/nm]
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全方向の放射光への補正(4πへの換算)
積分球が測定するのは2π方向(前方)です。放射がランバート分布(等方的)であると仮定し、全空間での放射光子数は測定値の2倍と見積もります。
Φtotal ≈ 2 × Φmeasured
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注入した電子数の算出
LEDに流した電流 I [A] から、1秒あたりの注入電子数を求めます。
Nelectron = I / q
※ q = 1.602 × 10-19 C(電子の電荷)
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外部量子効率(EQE)の算出
全放射光子数と電子数の比よりEQEを求めます。
EQE = (2 × Nphoton) / Nelectron = (2 × Nphoton × q) / I
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■内部量子効率(IQE)とは |
内部量子効率(Internal Quantum Efficiency, IQE)とは、半導体材料中で励起されたキャリア(電子と正孔)のうち、
放射再結合して光子を放出した割合を表す指標です。
定義式:
IQE = 放射再結合したキャリア数 / 全再結合キャリア数
IQEが高いほど、材料内部での光変換効率が高く、LEDやレーザー、太陽電池などの性能に大きく寄与します。
IQEは材料の結晶品質、欠陥密度、界面状態、組成不均一性などの影響を強く受けます。
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■クライオスタットを用いたIQE測定の概要 |
クライオスタット(極低温冷却装置)を用いたフォトルミネッセンス(PL)測定は、IQEを相対的に評価する一般的な手法です。
温度を10 K前後まで下げることで、非放射再結合が抑制され、ほぼすべての再結合が放射過程として観測されます。
このときのPL強度を基準(理想的な最大発光)とし、室温でのPL強度と比較してIQEを評価します。
IQEの近似計算式:
IQE300K = I300K / I10K
ここで、
I300K :室温でのPL積分強度
I10K :10 KでのPL積分強度(最大発光)
この手法は絶対値ではなく、温度による非放射再結合の影響を相対的に評価する方法です。
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■外部量子効率(EQE)と内部量子効率(IQE)の関係 |
外部量子効率(External Quantum Efficiency, EQE)は、デバイスから外部に放出された光子数と、注入または生成されたキャリア数の比です。
定義式:
EQE = 外部に出た光子数 / 注入された電子数
EQEは内部での発光効率だけでなく、光取り出し効率(Extraction Efficiency, ηout)にも依存します。
その関係は次のように表されます:
EQE = IQE × ηout
ここで、ηout は、材料内部で生成された光子のうち、実際に外部へ取り出せる割合です。
全反射や吸収、デバイス構造などにより取り出し効率は制限されるため、EQEは通常IQEよりも低くなります。
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